有価証券勘定:簿記上の扱いと購入時と売却時の仕訳のルールを解説
このページでは、資産グループの勘定科目である有価証券勘定の簿記上の扱いと、購入した時、売却した時の仕訳のルールや注意点を解説します。
有価証券勘定とは
日商簿記3級における有価証券勘定は、株式、債券の2つだけです。
一般的には小切手や手形も有価証券ですが、簿記では有価証券勘定を使いません。
日常生活と簿記上の定義を混同しないよう注意してください。
有価証券勘定は資産グループに属する勘定科目で、増加する時は借方(左側)へ、減少する時は貸方(右側)へ記入します。
有価証券の株式とは
株式は会社が発行している有価証券のことで、上場している会社の株式は一般の方でも購入できます。
株式を保有するとキャピタルゲインとインカムゲイン、2つの方法で利益を得ることができます。
- キャピタルゲイン:株式の価値が高くなった時に売却して利益を得ること
- インカムゲイン:株式を保有することで配当金を受取ること
一方で、株価が下がった時に損失を抱えるリスクもあります。また、配当金を出さない企業もあるので必ずしもインカムゲインを得られるわけではありません。
有価証券の債券とは
債券とは、国や地方自治体、企業などが資金調達を目的に発行する有価証券のことです。
株式もお金を集めることが目的ですが、債券は返済の義務があります。さらに、利息や満期日(返済期日)が決まっています。
債券を保有すれば利息と償還(売却)、2つの方法で利益を得られます。
- 利息:定期的に利息を受け取れます。株式の配当金と似ていますが債券の場合は予め金額が決まっています。
- 償還(売却):満期日になると債券を額面金額で買い取ってもらえます。額面金額よりも安い金額で債券を購入できる場合は、額面金額と購入金額の差分が利益になります。
償還の取引については、日商簿記3級では出題されません。(2級で出題されます。)
有価証券購入・売却時の仕訳ルール・仕訳例
有価証券の購入時の仕訳
有価証券の購入する際の仕訳は、最初に取得原価を計算します。
取得原価の計算式は下の通り。有価証券そのものの金額に購入時にかかった売買手数料などを加算します。
取得原価 = 購入代価 + 売買手数料(付随費用)
8/1、A社の株式を1株あたり80円で100株購入し、代金は売買手数料500円とともに現金で支払った
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売買目的有価証券 | 8,500 | 現金 | 8,500 |
1株80円で100株購入したので取得原価は8,000+売買手数料500円=8,500円。
有価証券勘定は資産グループなので購入時は借方(左側)へ記入します。
勘定科目名は、売買目的有価証券の場合もあれば有価証券も場合もあります。名称は問題の指示に従いましょう。
有価証券の売却時の仕訳
有価証券を売却した時の仕訳は、最初に売却価額が帳簿価額(簿価)よりも高いか安いか計算します。
簿価よりも高く売却した場合は有価証券売却益(収益グループ)を貸方(右側)へ、安く売却した場合は有価証券売却損(費用グループ)を借方(左側)へ記入します。
8/13、1株85円で購入したA社の株式100株を90円で売却し、現金で受け取った
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 9,000 | 売買目的有価証券有価証券売却益 | 8,500 500 |
例では有価証券の簿価85円×100株=8,500円に対して、売値が9,000円なので500円の利益が発生します。
簿価よりも高い金額で売却したので貸方に有価証券売却益勘定(収益)を記入します。
8/13、1株85円で購入したA社の株式100株を70円で売却し、現金で受け取った
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 有価証券売却損 |
7,000 1,500 |
売買目的有価証券 | 8,500 |
例では有価証券の簿価85円×100株=8,500円に対して、売値が7,000円なので1,500円の損失が発生します。
簿価よりも安い金額で売却したため、借方(左側)に有価証券売却損勘定(費用)を記入します。
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