財務諸表の作成:日商簿記3級試験で貸借対照表と損益計算書を作成する方法と注意点を解説
決算整理の後、財務諸表を作成するまでに大きく分けて5つのステップがあります。
このページでは、最後のステップ、財務諸表の作成について解説します。
財務諸表の作成方法
日商簿記3級試験における財務諸表とは、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の2種類を指します。
貸借対照表とは、企業の財政状態を明らかにするためにある時点の資産、負債、純資産グループの勘定科目の残高が書かれた一覧表のことです。
対する、損益計算書とは、一定の会計期間における企業の経営成績(儲け)を明らかにするために、会計期間内に発生した費用、収益グループに属する勘定科目の金額が書かれた一覧表のことです。
貸借対照表は繰越試算表から、損益計算書はSTEP1で作成した損益勘定を基に作成します。
貸借対照表の作成方法
貸借対照表はSTEP4で作成した繰越試算表を基に作成します。
繰越試算表に記載された資産、負債、純資産の勘定科目のすべてを転記します。
しかし、単純に転記するだけではいけません。いくつか注意しなければならないルールがあります。
勘定科目の名称についていくつか書き直す必要があります。たとえば、「繰越商品勘定」は「商品」へ、「売買目的有価証券」は「有価証券」へ。
次に売掛金は貸倒引当金の金額を差し引いた金額を記載します。
なぜなら、貸倒引当金は売掛金に対して見積もられた負債なので、売掛金のマイナスと見做すことができるためです。たとえば、売掛金450円に対して、20円の貸倒引当金を見積もった場合は売掛金は450 – 20 =430円とします。
同様に、減価償却累計額は建物や備品の減価償却費が累計されたものなので資産のマイナスと見做します。
たとえば、備品500円の減価償却費が40円の場合、備品は500円–40円=460円と記載します。
これにより備品の現在価値がわかりやすく貸借対照表へ反映されます。
最後に、STEP1の損益振替で算出した損益は当期純利益として貸方(右側)に記載します。
損益計算書の作成方法
損益計算書はSTEP1で作成した損益勘定を基に作成します。
損益勘定には費用、収益勘定の他に資本金勘定も記載されていますが、損益計算書に転記するのは費用、収益に関わる情報だけです。
損益勘定に記載された勘定科目と、損益計算書に記載された科目名称が異なる場合があるので注意しましょう。
仕入勘定は売上原価として、売上勘定は売上高として損益計算書に転記します。
また、当期純利益は損益勘定に記載された資本金を読み替えます。
損益計算書では資本金→当期純利益です。
第3章 決算手続き コンテンツ一覧
- 決算手続きの流れ:貸借対照表と損益計算書を作成する一連の流れを解説
- 試算表:総勘定元帳へスムーズに転記するための一覧表の内容を解説
- 精算表:財務諸表を作る過程で使用する一覧表のフォーマットや記入方法を解説
- 現金過不足:帳簿と実際の現金残高に差異があった時の決算整理の方法を解説
- 売上原価計算:売上原価、売上総利益の計算方法を解説
- 消耗品:期末の消耗品在庫の処理方法を解説
- 貸倒引当金の設定:得意先の倒産や未払いに備えたお金の設定、仕訳方法を解説
- 有価証券の評価替え:決算で有価証券の評価額を財務諸表に反映するルールと仕訳を解説
- 固定資産の減価償却:取得した固定資産の価値を費用計上する方法、仕訳ルールを解説
- 費用・収益の繰延べと見越し:決算日を跨いだ費用・収益の調整方法と仕訳ルールを解説
- 資本引出金の振替え:決算時に資本引出金の残高がある場合の振替え作業と仕訳ルールを解説
- 損益勘定振替:収益と費用の差額を計算して当期純利益(損失)を求める方法を解説
- 資本振替:当期純利益(損失)を資本金に反映する方法と仕訳ルールを解説
- 勘定の締め切り:勘定科目ごとに翌期に持ち越す残高を確定させる作業方法を解説
- 繰越試算表の作成:翌期に繰り越す勘定科目の残高の正確性を確認するための帳簿の作成方法を解説
- 財務諸表の作成:日商簿記3級試験で貸借対照表と損益計算書を作成する方法と注意点を解説