貸倒引当金の設定:得意先の倒産や未払いに備えたお金の設定、仕訳方法を解説
このページでは、決算整理事項のひとつである貸倒引当金の設定に関するルールや仕訳方法について解説します。
貸倒引当金とは
貸倒引当金とは、得意先が倒産した時に損失を補てんするために蓄えておくお金のことです。
一般的に、商品を得意先に掛けで販売(売掛金)すると、決められた期日までに入金されます。
しかし、もし得意先が倒産してしまった場合回収ができなくなる恐れがあります。
このように得意先から債権回収ができなくなってしまうことを貸倒れといいます。
企業は貸倒れの発生に備えて予めある一定のお金を貸倒引当金として蓄えておきます。
そして、貸倒引当金を準備していることを予め利害関係者に対して財務諸表を通じて開示します。
貸倒引当金の見積もりの計算式は次の通り。
貸倒引当金見積額 = 売上債権の期末残高 × 設定率
売上債権期末残高とは、受取手形、売掛金などの売上債権期末残高のことです。
設定率とは、債権全体で貸倒引当金を設定する割合のことです。日商簿記3級試験では、問題文に設定率が指定されています。
問題文で与えられた情報をもとに貸倒引当金を計算します。
貸倒引当金の仕訳
貸倒引当金の仕訳は次の通りです。
決算において債権期末残高に対して5%の貸倒れを見積もった。債権期末残高の内訳は売掛金10,000円、受取手形4,000円である
債権期末残高14,000円の5%=700円を貸倒引当金として設定します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 700 | 貸倒引当金 | 700 |
見積り額の仕訳は貸倒引当金繰入勘定(費用グループ)を借方(左側)に記入し、貸倒引当金勘定(資産グループ)を貸方(右側)に記入します。
差額補充法を使った仕訳
さきほどの取引について、もしもすでに500円の貸倒引当金が設定されていた場合、さらに700円を上積みしてしまうと1,200円の貸倒引当金が計上されてしまいます。
債権期末残高の5%を見積もればよいので、1,200円も必要ありません。したがって、不足している200円分だけを貸倒引当金として上積みします。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 200 | 貸倒引当金 | 200 |
このように現在の残高と見積額の差額を補充する方法を差額補充法といいます。日商簿記3級試験ではこの方法のみが出題されます。
第3章 決算手続き コンテンツ一覧
- 決算手続きの流れ:貸借対照表と損益計算書を作成する一連の流れを解説
- 試算表:総勘定元帳へスムーズに転記するための一覧表の内容を解説
- 精算表:財務諸表を作る過程で使用する一覧表のフォーマットや記入方法を解説
- 現金過不足:帳簿と実際の現金残高に差異があった時の決算整理の方法を解説
- 売上原価計算:売上原価、売上総利益の計算方法を解説
- 消耗品:期末の消耗品在庫の処理方法を解説
- 貸倒引当金の設定:得意先の倒産や未払いに備えたお金の設定、仕訳方法を解説
- 有価証券の評価替え:決算で有価証券の評価額を財務諸表に反映するルールと仕訳を解説
- 固定資産の減価償却:取得した固定資産の価値を費用計上する方法、仕訳ルールを解説
- 費用・収益の繰延べと見越し:決算日を跨いだ費用・収益の調整方法と仕訳ルールを解説
- 資本引出金の振替え:決算時に資本引出金の残高がある場合の振替え作業と仕訳ルールを解説
- 損益勘定振替:収益と費用の差額を計算して当期純利益(損失)を求める方法を解説
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- 繰越試算表の作成:翌期に繰り越す勘定科目の残高の正確性を確認するための帳簿の作成方法を解説
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