損益勘定振替:収益と費用の差額を計算して当期純利益(損失)を求める方法を解説
決算整理の後、財務諸表を作成するまでに大きく分けて5つのステップがあります。
このページでは、1つ目のステップの損益勘定振替えについて解説します。
損益勘定振替とは
決算整理後、最初にする作業は当期純利益を算出すること。
当期純利益を算出することで企業が1年間に儲けた金額が明らかになります。
当期純利益は費用と収益の差額で求めます。
日商簿記3級試験では、当期純利益を損益勘定という新しい勘定科目を用いて計算します。
損益勘定に収益、費用の残高すべてを記入します。
すると、下の図の通り、損益勘定の借方残高はすべて費用勘定、貸方はすべて収益勘定の残高になります。
ここで収益と費用の差額を計算します。損益勘定の貸方の残高が当期純利益です。
このように損益勘定を使用して当期純利益を求める方法が損益振替です。
損益勘定振替の仕訳ルール
損益振替は収益と費用に属する全ての勘定科目を損益勘定に振り替える作業のことです。
費用勘定は損益勘定の借方に、収益勘定は損益勘定の貸方に振り替えられます。
たとえば、決算整理後の仕入勘定の残高が500の場合、残高が0になるように振替を行うので借方(左側)に損益勘定、貸方(右側)に仕入勘定を記入します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
損益 | 500 | 仕入 | 500 |
一方、収益グループの売上勘定の残高が700だった場合は、こちらも売上勘定の残高を0にする必要があるため借方に売上勘定、貸方に損益勘定を記入します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売上 | 700 | 損益 | 700 |
このようにすべての費用、収益の勘定科目に対して残高が0になるまで損益振替をします。
振替処理を終えた時の、費用と収益の差額が当期純利益です。
収益よりも費用が大きい場合は、その差額は当期純損失です。
第3章 決算手続き コンテンツ一覧
- 決算手続きの流れ:貸借対照表と損益計算書を作成する一連の流れを解説
- 試算表:総勘定元帳へスムーズに転記するための一覧表の内容を解説
- 精算表:財務諸表を作る過程で使用する一覧表のフォーマットや記入方法を解説
- 現金過不足:帳簿と実際の現金残高に差異があった時の決算整理の方法を解説
- 売上原価計算:売上原価、売上総利益の計算方法を解説
- 消耗品:期末の消耗品在庫の処理方法を解説
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- 有価証券の評価替え:決算で有価証券の評価額を財務諸表に反映するルールと仕訳を解説
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- 費用・収益の繰延べと見越し:決算日を跨いだ費用・収益の調整方法と仕訳ルールを解説
- 資本引出金の振替え:決算時に資本引出金の残高がある場合の振替え作業と仕訳ルールを解説
- 損益勘定振替:収益と費用の差額を計算して当期純利益(損失)を求める方法を解説
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- 勘定の締め切り:勘定科目ごとに翌期に持ち越す残高を確定させる作業方法を解説
- 繰越試算表の作成:翌期に繰り越す勘定科目の残高の正確性を確認するための帳簿の作成方法を解説
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