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費用・収益の繰延べと見越し:決算日を跨いだ費用・収益の調整方法と仕訳ルールを解説

公開年月日 : 2018/07/06 更新年月日 : 2018/08/30

期中に記録した取引の中には正確に損益が反映できないものがあります。

たとえば、翌期以降の収益・費用が含まれていたり、当期に計上すべき収益・費用の代金の受渡ができておらず記帳されない取引があります。

これらは記帳方法を間違えたのでなく、取引の特性によって決算時に修正仕訳しなければならない取引なのです。

これから説明する内容は、費用・収益の繰延べ・見越しといって、決算時に今期に計上すべき費用・収益を明確にする決算整理事項です。

費用・収益の繰延べとは

12月末が決算日の会社が7月1日に1年分の保険料を支払った場合、

今期の半年分(6か月)の保険料と併せて、翌期分(6か月分)も支払います。

ここで、納めた保険料を全額費用に計上してしまうと、今年の決算書に来期の支払保険料までも反映されてしまいます。

費用・収益の繰延べと見越し:費用の繰延べ

今期の決算書には今期の保険料のみを計上しなければいません。翌期分の保険料は今期の決算書からは取り除かなければいけません。

このような翌期の費用を取り除く処理を費用の繰延べといいます。これに対して、今期に計上した翌期分の収益を取り除く処理は収益の繰延べといいます。

費用・収益の繰延べと見越し:費用の繰延べ詳細

仕訳例:費用の繰延べ

費用として支払った金額のうち、翌期以降の費用となる分は前払費用勘定に振替えます。

前払勘定は翌期以降の費用を既に支払っているので資産グループです。

7/1に向こう1年分の保険料を12,000円現金で支払った。東京商店の会計期間は1/1から12/31であるため、決算時に繰延べ処理を行う。なお、勘定科目は前払保険料を使用する

既に7/1の時点で12,000円の保険料を支払っているため期中に下の仕訳が行われています。

仕訳-繰延べ見越し-費用繰延べ
借方科目 金額 貸方科目 金額
支払保険料 12,000 現金 12,000

この仕訳には翌期に計上されるはずの保険料6,000円が今期の費用として計上されています。

したがって、6,000円を翌期に繰延べる必要があるので、決算時に前払保険料勘定に振り替えます。

借方(左側)に前払保険料勘定(資産グループ)、貸方(右側)に支払保険料(費用グループ)を記入します。

仕訳-繰延べ見越し-費用繰延べ
借方科目 金額 貸方科目 金額
前払保険料 6,000 支払保険料 6,000
費用・収益の繰延べと見越し:費用の繰延べ精算表記入例

仕訳例:収益の繰延べ

収益として受け取った金額のうち、翌期以降の収益となる分は前受収益勘定に振替えます。

前受勘定は翌期以降の収益を既に受け取ってしまっているため負債グループに属します。

7/1に向こう1年分の家賃を6,000円を現金で受け取った。東京商店の会計期間は1/1から12/31であるため、決算時に繰延べ処理を行う。なお、勘定科目は前受家賃を使用する

東京商店は既に7/1に1年分の家賃6,000円受け取っています。その時は下記の仕訳が行われています。

仕訳-繰延べ見越し-収益繰延べ
借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 12,000 受取家賃 12,000

この仕訳には翌期の家賃収益3,000円が今期の収益として計上されています。

したがって3,000円分を翌期に繰延べる必要があるため決算時に下記の仕訳を行います。

既に収益計上していた6,000円の受取家賃のうち3,000円分を翌期の収益に振り替えるため、借方(左側)に受取家賃勘定(収益グループ)、貸方(右側)に前受家賃勘定(負債グループ)を記入します。

仕訳-繰延べ見越し-収益繰延べ
借方科目 金額 貸方科目 金額
受取家賃 3,000 前受家賃 3,000
費用・収益の繰延べと見越し:収益の繰延べ精算表記入例

費用・収益の見越しとは

1年分の家賃を契約してから1年後に支払う(後払いの)場合、

今期の家賃を支払う前に決算日を迎えてしまいます。期中ではお金の取引が発生しませんが今期の家賃分は費用に計上しなければいけません。つまり半年分(7月1日~12月31日)の家賃を今期の決算書に含める必要があります。

費用・収益の繰延べと見越し:費用の見越し

このように今期分の費用を計上する処理を費用の見越しといいます。一方、今期分の収益を計上する処理のことを収益の見越しといいます。

費用・収益の繰延べと見越し:費用の見越し詳細

仕訳例:費用の見越し

当期に計上すべき費用で未払いの分は借方(左側)に費用勘定を計上し、未払費用勘定(負債グループ)を貸方(右側)に記入します。

未払費用勘定は支払うべき費用を未だ支払っていない、債務として扱われるので負債グループに属します。

7/1に賃貸契約を締結し家賃は1年後に全額12,000円支払うこととした。東京商店の会計期間は1/1から12/31であるため、決算時に見越し処理を行う。なお、勘定科目は未払家賃勘定を使用する

この取引では家賃をまだ支払っていないため、期中の仕訳は発生していません。

したがって、決算整理で今期に計上されるべき家賃6カ月分、6,000円を費用計上します。

今期計上されるべき家賃6,000円を計上するため、支払家賃勘定(費用グループ)を借方(左側)に、家賃未払分を未払家賃勘定として貸方(右側)に記入します。

仕訳-繰延べ見越し-費用見越し
借方科目 金額 貸方科目 金額
支払家賃 6,000 未払家賃 6,000
費用・収益の繰延べと見越し:費用の見越し精算表記入例

仕訳例:収益の見越し

当期に計上すべき収益なのにお金を回収していない取引は借方(左側)に未収収益勘定を計上し、収益勘定(収益グループ)を貸方(右側)に記入します。

未収収益勘定は、まだ受け取れていないお金、つまり債権として扱われるため資産グループに属します。

7/1に賃貸契約を締結し家賃は1年後に全額6,000円を受け取ることとした。東京商店の会計期間は1/1から12/31であるため、決算時に収益処理を行う。なお、勘定科目は未収家賃勘定を使用する

家賃はまだ受け取っておらず期中に仕訳をしていないので収益は未計上です。

したがって決算整理で今期計上されるべき家賃6カ月分、3,000円を費用計上します。

仕訳-繰延べ見越し-収益見越し
借方科目 金額 貸方科目 金額
未収家賃 3,000 受取家賃 3,000
費用・収益の繰延べと見越し:収益の見越し精算表記入例

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